
今回は、「子どもの尿路感染症」について、親御さんにぜひ知っておいていただきたいポイントをお話しします。
「熱はあるけど風邪症状はなし」「おむつがいつもより臭う」「トイレトレーニングがうまくいかない」
こんな場面に心当たりはありませんか?
実はそれ、尿路感染症のサインかもしれません。
子ども、とくに乳幼児は症状がわかりにくく、気づかれにくいのが尿路感染症の特徴です。
早期に適切な対応をすることで、将来的な腎機能障害のリスクも下げることができます。
この記事では、子どもに多い尿路感染症の種類や原因、注意すべき症状、そして泌尿器科での対応と予防策について、わかりやすくご説明します。
子どもにも起こる尿路感染症とは?
尿路感染症とは、腎臓から尿道までの尿の通り道(尿路)に細菌が感染して炎症を起こす病気です。
子ども、とくに0〜3歳くらいの乳幼児に多く見られるのが特徴です。
原因の多くは大腸菌などの腸内細菌で、肛門付近から尿道を通って膀胱や腎臓に入り込みます。
男の子? 女の子? どちらに多い?
実は、年齢によって傾向が変わります。
年齢層 | 感染しやすい性別 |
生後〜1歳頃 | 男の子(特に包茎の子) |
1歳以降 | 女の子(尿道が短く、肛門に近いため) |
生後間もない男の子に多い理由としては、包茎による汚れのたまりやすさが挙げられます(亀頭包皮炎)
一方、女の子は成長とともに尿道炎や膀胱炎を起こしやすくなります。
子どもの尿路感染症の症状は?
大人と違って、子どもは症状をうまく訴えることができません。
そのため、以下のような「なんとなくおかしい」サインを見逃さないことが大切です。
乳幼児の場合(0〜3歳頃)
• 原因不明の発熱(38℃以上)
• おしっこが臭う
• おむつかぶれがひどい
• 哺乳量が減る、ぐったりする
• おしっこの回数が減った or 多い
• 嘔吐や下痢を伴うことも
※発熱だけで風邪症状がない場合は、尿検査が必要です。
幼児〜小学生の場合
• 排尿時の痛み(「おしっこが痛い」と訴える)
• 頻尿(トイレが近い)
• 尿もれ、トイレを我慢してしまう
• 下腹部の痛み
• 血尿(まれに見られる)
• 亀頭、包皮の発赤・腫れ
※トイレトレーニング中の「失敗」が続く場合、膀胱炎が隠れていることも。
どうして尿路感染症になるの?
子どもが尿路感染を起こしやすい理由には、いくつかの医学的要因があります。
主な原因
• おむつによる蒸れや汚れ
• トイレトレーニング中の排尿我慢
• 包茎による細菌の繁殖
• 女の子の尿道が短く、肛門と近い
• 免疫力がまだ未熟
• 先天的な尿路の異常(尿管逆流など)
中には、生まれつきの「尿の逆流(膀胱尿管逆流症)」が隠れていることもあり、繰り返す尿路感染症では泌尿器科での精密検査が必要になります。
泌尿器科での検査と治療
泌尿器科では、お子さんの年齢や症状に応じて、以下のような検査を行います。
主な検査
• 尿検査(おむつの場合は採尿バッグを使用)
• 尿培養検査(原因菌と抗菌薬の効果を確認)
• 超音波検査(エコー):腎臓や膀胱の形状・腫れを確認
• 血液検査(必要に応じて)
• 視診:亀頭包皮炎の際は、無理のない範囲で包皮を剥いて発赤部を確認します
治療は?
• 原則として抗菌薬(抗生物質)の内服
• 亀頭包皮炎の際は清潔+抗生剤の軟膏での対応
• 高熱や嘔吐が強い場合は点滴や入院治療
• 尿のトラブルがあれば排尿習慣の指導も併用
※適切な治療を受ければ、通常は数日で改善します。
再発させないための予防ポイント
子どもの尿路感染症は、再発を繰り返すケースも少なくありません。
以下のようなポイントを意識して、日常生活から予防を心がけましょう。
1. こまめにおむつ交換を
長時間のおむつ使用は菌の繁殖を助けます。特に夏場は要注意。
2. 排尿を我慢させない
トイレに行くのを我慢させないよう、声がけをして安心させてください。
3. 水分補給をしっかり
尿の量を増やして、菌を洗い流す効果があります。
4. 入浴時に清潔ケア
男の子は包皮の下、女の子は陰部を優しく洗って清潔に。
5. トイレの拭き方を教える(女の子)
拭く方向は必ず「前から後ろへ」。逆にすると肛門の菌が尿道に入る恐れがあります。
どんな時に泌尿器科を受診すべき?
こんな症状がある場合は、迷わず泌尿器科や小児科を受診してください。
• 発熱があるが風邪症状がない
• おしっこの臭いがきつくなった
• 尿が濁っている・血が混じっている
• 排尿時に痛みがある
• 尿路感染症を何度も繰り返している
• 腎臓の異常を指摘されたことがある
泌尿器科では、小児の感染症にも対応しており、必要に応じて精密検査も可能ですださい。
おわりに

子どもの尿路感染症は、症状がわかりづらく、風邪や胃腸炎と間違われやすい病気です。
しかし、早期に適切な治療を行えば、ほとんどは後遺症なく回復できます。
親御さんが日常のちょっとした変化に気づいてあげることが、何より大切です。
「なんとなくいつもと違うな」と感じたら、遠慮せず泌尿器科にご相談ください。
お子さんの健やかな成長を、泌尿器科専門医の立場からしっかりとサポートさせていただきます。