今回は、性感染症のひとつである「尖圭(せんけい)コンジローマ」についてお話しいたします。
「陰部にイボのようなものができた」「なんだか見た目が変わったような気がする」
そんなとき、皮膚のトラブルかな?と軽く考えてしまう方も多いのですが、もしかするとそれは「尖圭コンジローマ」という性感染症かもしれません。
尖圭コンジローマは見た目の症状が特徴的ですが、実は外見だけでは正確な診断が難しいこともあります。
今回は、見逃しやすいリスクと、泌尿器科でできる検査・治療について詳しくご紹介します。
尖圭コンジローマとは?
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染によって起こる性感染症です。
主に性行為(膣性交、口腔性交、肛門性交)を通じて感染します。
HPVには100種類以上の型がありますが、尖圭コンジローマの原因となるのは主にHPV6型と11型。これらは「低リスク型」とされ、悪性腫瘍(がん)になる可能性は低いものの、再発しやすいという特徴があります。
どんな症状が出るの?
尖圭コンジローマの典型的な症状は、陰部や肛門周囲に小さなイボ(乳頭状の腫瘤)ができることです。
• 男性:陰茎、陰嚢、尿道口、肛門周辺など
• 女性:大陰唇、小陰唇、膣口、肛門、膣内、子宮頸部など
イボは最初は1個でも、放っておくと数が増えて群生し、カリフラワーのような形状になることがあります。かゆみや痛みは少なく、見た目だけで気づくケースが多いです。
なぜ「見た目だけで判断できない」の?
他の皮膚疾患と似ている
尖圭コンジローマは、湿疹や吹き出物、皮膚の盛り上がりと見分けがつきにくいことがあります。特に男性の陰茎にできる「真珠様陰茎小丘疹」や、女性の外陰部の「フォアダイス」と間違えられることもあります。
「ただの肌荒れかな?」「毛穴が炎症してるだけでは?」と思ってしまい、受診が遅れることがよくあります。
自覚症状がない
尖圭コンジローマは、かゆみや痛みがほとんどないため、自分では気づきにくいことが多いです。また、膣内や肛門の奥にできた場合は、自分で確認することすら困難です。
そのため、「パートナーに指摘されて初めて気づいた」というケースも少なくありません。
潜伏期間が長い?知らないうちに感染していることも
尖圭コンジローマの潜伏期間は平均2〜3ヶ月、時には6ヶ月以上経ってから症状が出ることもあります。つまり、感染のきっかけとなった性行為からかなり時間が経ってから症状が出るため、
• 「誰からうつされたのか分からない」
• 「パートナーとの関係がこじれそうで不安」
といった心理的ストレスを感じる患者さんも多いです。
ですが、感染経路を特定することは難しく、パートナーを責めるのではなく、冷静に受診・治療することが大切です。
放置するとどうなるの?
尖圭コンジローマ自体は命にかかわる病気ではありませんが、放置すると以下のようなリスクがあります。
• イボの数や大きさが増えて、生活に支障が出る(排尿・排便障害)
• パートナーに感染させる可能性
• 再発を繰り返し、精神的に大きな負担となる
• HPVの他の型に同時感染していた場合、子宮頸がんや肛門がんのリスクも
特に女性は、HPV16型・18型といった「高リスク型」への感染があると、子宮頸がんの発症リスクが高まるため注意が必要です。
泌尿器科での診断と治療
診断
尖圭コンジローマの診断は、主に視診によって行われます。
特徴的なイボの形状や色、分布を確認することで診断されます。
治療
尖圭コンジローマの治療には、以下の方法があります。
外用療法
医師の処方による塗り薬(イミキモドクリームなど)を患部に塗布します。週3回の塗布を最大16週間続けることが一般的です。副作用として、赤みやかゆみ、ただれなどが現れることがあります。
外科療法
病変部を物理的に除去する方法で、以下のような手法があります。
• 冷凍凝固法(液体窒素を用いた凍結療法)
• レーザー蒸散法(CO2レーザーなどを使用)
• 電気メスによる焼灼法
これらの治療法は、病変の大きさや数、患者さまの希望などに応じて選択されます。治療後も再発の可能性があるため、定期的な経過観察が重要です。
*当院では外科療法は行なっておりませんので、必要に応じて連携病院にご紹介します。
再発を繰り返しやすい病気のため、治療後も経過観察が必要です。
パートナーも一緒にチェックを
尖圭コンジローマは、自分だけが治っても、パートナーが未治療だと再感染することがあります。
泌尿器科では、パートナーの検査や相談にも対応しております。お二人での受診をためらう必要はありません。
まとめ:見た目で判断せず、泌尿器科へ相談を
尖圭コンジローマは、見た目の変化があるものの、それだけで判断できるとは限りません。
早期発見・早期治療が大切です。
• 陰部にイボや違和感を感じたら、早めに受診
• 自覚症状がないこともあるので、パートナーからの指摘も大切
• 泌尿器科では検査・治療の体制が整っており、再発予防にも対応
• HPVワクチンでの予防も検討しましょう
恥ずかしがらず、どうぞお気軽にご相談ください。当院ではプライバシーに配慮した診療を行っております。
