今回は、「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)」についてお話しいたします。
HIVという言葉を聞くと、「怖い病気」「一生治らない」「自分とは無縁」といったイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし現在、HIVは早期発見・早期治療により健康的な生活を維持できる病気になってきています。
本記事では、HIVの初期症状とはどんなものか、また泌尿器科ではどんな検査・サポートができるのかを、わかりやすくご説明します。
HIVとは?
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、体の免疫機能を徐々に壊していくウイルスです。
感染しているだけではすぐに発症するわけではありませんが、治療せずに放置すると、数年~10年の間に免疫力が低下し、さまざまな感染症や悪性腫瘍を発症する「エイズ(AIDS)」に至ります。
HIVに感染しても、初期は自覚症状がないか、ごく軽い症状だけのことが多いため、気づかないまま放置されてしまうケースもあります。
HIVの感染経路は?
HIVは、主に以下のような経路で感染します:
• 性交渉(膣性交、肛門性交、口腔性交)
• 血液(注射器の共有など)
• 母子感染(妊娠・出産・授乳)
中でも性行為による感染が最も多く、特に無防備な性行為(コンドームなし)によって感染するリスクが高まります。
初期症状とは?風邪と見分けがつかないことも
HIV感染後、約2〜6週間の間に「急性HIV感染症」と呼ばれる初期症状が現れることがあります。
代表的な症状:
• 発熱(38℃前後が数日〜1週間続く)
• 倦怠感、筋肉痛
• 頭痛
• のどの痛み
• リンパ節の腫れ(首、脇、股など)
• 発疹(体幹部、顔などに赤い小さな発疹)
これらの症状は風邪やインフルエンザ、喉風邪と似ているため、HIVに感染したとは気づかないことがほとんどです。
また、「症状が出なかった」「知らない間に治った」という人も多く、HIV感染は無症状で進行することがあるのが特徴です。
放置するとどうなるの?
HIV感染を放置すると、体内のCD4陽性T細胞という免疫細胞が徐々に減少し、免疫力が著しく低下していきます。
その結果、以下のような「日和見感染症」や「がん」を発症することがあります:
• ニューモシスチス肺炎(PCP)
• カンジダ症(口腔や食道)
• トキソプラズマ脳症
• カポジ肉腫(皮膚に紫斑状の腫瘍が出る)
これが、いわゆるエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)の状態です。
ただし、現在では早期治療によってエイズ発症を防ぐことができるようになっています。
泌尿器科での関わりとは?
HIVと泌尿器科、少し意外に思われるかもしれません。
しかし実際には、泌尿器科はHIV感染のきっかけに気づく重要な場でもあります。
なぜなら…
• 尿道炎や精巣上体炎などの性感染症(STI)の合併が多い
• クラミジアや淋菌など、他のSTIに感染しているとHIVの感染リスクが上昇
• HIV感染により、泌尿器症状(排尿困難、陰嚢の腫れなど)が出ることもある
泌尿器科では、性感染症の診療を行う中で、「念のためHIV検査も希望しますか?」とお声かけすることがあります。
もちろん、患者さまの意向を大切にしながら、匿名・プライバシー保護のもとで検査を行っています。
HIV検査はどうやって受けるの?
泌尿器科でのHIV検査には、以下のような方法があります:
• 血液検査(抗体・抗原検査)
感染後3〜4週間で検出可能、当院では検査は外注しますで数日で結果が出ます。
HIV検査は、症状がなくても受けられますし、他の性感染症とセットで調べることも可能です。
気になる方は「HIVの検査もできますか?」とお気軽にお尋ねください。
また結婚前のブライダルチェックでもセットで可能ですのでご相談ください。
治療はあるの?HIVと共に生きる時代へ
現在のHIV治療は大きく進歩しており、「ART(抗レトロウイルス療法)」という内服治療によって、ウイルス量を限りなくゼロに抑えることが可能です。
• 1日1回の服薬でOKな薬剤も登場
• 適切に治療すれば、他人に感染させない状態を維持可能
• 寿命も健常人と変わらないレベルに近づいています
治療開始は早ければ早いほど有利です。だからこそ、「もしかして…」と思ったときにすぐ検査を受けることが最大の予防になるのです。
まとめ:HIVは早期発見・治療で怖くない病気へ
HIVは、確かに放置すれば重大な疾患につながる病気です。
しかし、今や「早期に発見して、しっかり治療すれば、健康的な人生を送れる病気」になりました。
• 風邪のような症状が続いたとき
• 感染リスクがあったかも…と感じたとき
• 他の性感染症と一緒にチェックしたいとき
そんなときは、どうぞ泌尿器科にご相談ください。当院では、安心・安全・プライバシー厳守でHIV検査や性感染症の診療を行っております。
