今回は、性感染症(STI)の検査や治療において、「パートナーと一緒に受けること」がなぜ重要なのかについて、詳しくお話しします。
性感染症の診療に携わっていると、「自分だけ治療すれば大丈夫ですよね?」という質問をいただくことがあります。
しかし、実際には片方だけの治療では不十分なケースが多く、感染の再発やすれ違いの原因になることもあります。
将来の健康だけでなく、お互いへの信頼や思いやりを保つためにも、パートナーと一緒に検査・治療を受ける意義をぜひ知っていただきたいと思います。
なぜパートナーと一緒に検査・治療が必要なの?
1. 再感染を防ぐため
性感染症は、一方だけが治療しても、もう一方が未治療のままだと再感染してしまう恐れがあります。
たとえば、クラミジアや淋菌は抗菌薬で治療できますが、パートナーが感染している状態で性行為を再開すると、「ピンポン感染(キャッチボール感染)」といって、何度も感染を繰り返すことになります。
治療が無駄になってしまうだけでなく、再感染によって症状が悪化し、不妊や慢性炎症など合併症のリスクが高まる可能性もあります。
2. 無症状でも感染していることがあるから
多くの性感染症は、自覚症状がないまま感染しているケースが多くあります。
• クラミジア感染症:女性の7割、男性の5割以上が無症状
• 淋菌感染症:特に咽頭感染は無症状のことが多い
• 梅毒:初期症状が自然に消えて見過ごされやすい
自分は症状がないから大丈夫、と思っても、パートナーからうつされた可能性がある以上、一緒に検査して確認することが非常に重要です。
3. パートナーの将来の健康を守るため
性感染症は、長期的に放置すると深刻な健康問題につながることがあります。
• 女性:卵管炎や骨盤内炎症性疾患→不妊・子宮外妊娠のリスク
• 妊婦:赤ちゃんへの感染(先天性梅毒、新生児肺炎など)
自分が感染源になってしまうことで、大切な人の将来を脅かしてしまう可能性がある。
だからこそ、「一緒に受けよう」と声をかけ合うことが、お互いの健康と信頼関係を守る行動になります。
4. 2人で受けると心理的な負担が軽くなる
性感染症の検査や治療に対しては、「恥ずかしい」「怖い」「自分だけが悪いみたいで気が重い」と感じる方が多いです。
ですが、2人で一緒に受けると、不安や羞恥心がぐっと軽減されます。
• 一緒に受けることで自然に会話ができる
• お互いを責め合うのではなく、前向きに健康を守る姿勢が持てる
• 「一緒に乗り越える」という連帯感が生まれる
カップルで来院される患者さんからは、「思ったより安心して受けられた」「お互いの理解が深まった」という声が多く聞かれます。
受診時のよくあるご質問
Q:パートナーを連れて行くと、恥ずかしくないですか?
A:ご安心ください。当院ではプライバシーに配慮した診療体制を整えておりますので、遠慮なくお越しください。
Q:パートナーが検査を嫌がるのですが…
A:性感染症は、責任や罪の問題ではなく“感染症”という医療上の話です。
「一緒に健康を守ろう」「お互いに安心したいから」と伝えることで、受け入れてもらいやすくなります。
当院では、初診時に同席での診察でも、個別対応も可能です。
Q:2人で同時に検査を受けられますか?
A:はい、対応可能です。検査項目の希望に合わせて、同時に実施できます。
検査は外注にて行い、結果説明は後日となりますが、外来か今後WEB(スマートフォン)での患者さん自身での検査結果を確認できる様に検討しておりますので、ぜひご相談ください。
泌尿器科でできること
• 男女ともに対応可能な性感染症検査(尿・血液など)
• 結果に応じた迅速な治療(内服・注射)
• パートナー同士での受診や相談への配慮
• ブライダルチェックや妊活前検査も対応
• プライバシーに最大限配慮した診療体制
「まずは片方だけ受けて、後日パートナーと一緒に」も大歓迎です。
まとめ:健康も、信頼も、2人で守る時代へ
性感染症は、一人の問題ではなく“2人の健康の問題”です。
• 一方だけ治療しても、再感染のリスクがある
• 無症状でも感染している可能性がある
• 放置すると不妊や妊娠への影響も
• 2人で受けることで、心の負担も軽くなる
「検査を受けよう」「治療を一緒に進めよう」
そうした思いやりの一歩が、お互いの健康と信頼を守る大切な行動になります。
