「さっきから尿意があるのに、全く出ない」
「お腹が張って痛いのに、トイレに行っても一滴も出ない」
このような症状は、泌尿器科で最も注意すべき緊急事態のひとつである尿閉の可能性があります。
尿閉は、放置すると腎機能障害や膀胱の損傷にもつながるため、
迅速な対応が重要です。
今回は、尿閉とはどんな状態なのか、原因や対処法、そして予防について詳しく解説いたします。
尿閉とは?
閉とは、「膀胱に尿が溜まっているのに、排尿がまったくできない状態」です。
• 強い尿意はあるのに、1滴も出ない
• トイレに行っても排尿できず、腹部に張り・痛みが出る
• 下腹部を触ると、ゴムのように膨らんだ膀胱がわかることもあります
このような状態になった場合、できるだけ早く泌尿器科または救急で受診が必要です。
尿閉の原因
尿閉の原因には、大きく分けて以下の2種類があります。
① 排出の通り道が塞がれる「機械的な原因」
• 前立腺肥大症(男性に多い):前立腺が大きくなり、尿道を圧迫
• 尿道狭窄(にょうどうきょうさく):尿道が傷や炎症で細くなる
• 尿道結石:石が尿道に詰まり、通れなくなる
② 膀胱や神経のトラブル「機能的な原因」
• 神経因性膀胱:脳卒中・脊髄損傷・糖尿病などで、排尿指令がうまく働かない
• 麻酔や手術後の一時的な排尿障害
• 薬の副作用:抗うつ薬、抗アレルギー薬、抗コリン薬などに注意
• 精神的な緊張やストレスでも一時的に排尿が抑制されることがあります
特に多いのは「前立腺肥大症」による尿閉
中高年男性にもっとも多い原因が、前立腺肥大症による尿道圧迫です。
通常は徐々に「出にくい」「残尿感がある」などの症状が現れますが、
風邪薬やアルコール、寒さなどのきっかけである日突然、尿が出なくなることがあります。
「何度かトイレに行っても全く出ない」「お腹が苦しくて眠れない」などの症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。
尿閉の放置は危険です!
尿が出ない状態が長く続くと、以下のような合併症を引き起こします:
• 膀胱の過伸展:膀胱が膨らみすぎて筋肉が損傷
• 腎臓への逆流(水腎症):腎臓の働きが低下し、腎不全の危険も
• 尿路感染症・膀胱炎:尿が溜まり続けることで細菌が繁殖しやすくなる
• 血尿・膀胱出血:膀胱内圧の上昇による出血
命に関わることもあるため、「様子を見る」のは絶対に避けてください。
泌尿器科での緊急対応
尿閉と判断された場合、まずは膀胱の尿を安全に出すことが最優先です。
カテーテル挿入(導尿)
• 細いチューブ(尿道カテーテル)を尿道から挿入し、膀胱内の尿を排出します
• 数百ml〜1リットル以上の尿が出ることもあり、痛みもスッキリ和らぎます
原因を特定する検査
• 超音波検査(膀胱・腎臓)
• 血液検査(腎機能・炎症反応)
• 尿検査(感染・結石の有無)
• 必要に応じてCT検査
原因を特定した上で、今後の治療方針を検討します。
原因別の治療法
尿閉の治療は、原因に応じて異なります。
薬物療法
• 前立腺肥大:α1遮断薬、5α還元酵素阻害薬
• 過活動膀胱・神経因性膀胱:抗コリン薬、β3作動薬
• 炎症や感染がある場合:抗菌薬
継続的カテーテル管理
• 一時的に膀胱を休ませるため、数日〜1週間カテーテルを留置
• 自宅での自己導尿指導を行う場合もあります
手術療法(前立腺肥大症や尿道狭窄)
• TURP(経尿道的前立腺切除術)
• HoLEP(レーザー前立腺手術)
• 内尿道切開術(尿道狭窄の場合)など
尿閉の予防法は?
すべての尿閉を防ぐことはできませんが、以下のポイントが予防に役立ちます:
排尿の変化に気づいたらすぐ相談
• 「出にくい」「残ってる気がする」と感じたら早めに泌尿器科へ
風邪薬・抗アレルギー薬に注意(特に男性)
• 抗コリン作用のある薬は前立腺肥大の人に尿閉を引き起こすことがあります
飲酒後・寒冷時の排尿困難に注意
• アルコールや寒さも誘因になります
• 冬場の夜間や外出先では暖かい環境を保ちましょう
まとめ:尿が出ない状態は、ためらわず受診を
• 尿閉は、膀胱に尿がたまっているのにまったく出せない緊急事態です
• 前立腺肥大、神経障害、薬の副作用などが主な原因
• 早期のカテーテル処置と原因治療で改善できます
• 放置すると腎不全・感染・膀胱損傷のリスクがあります
「尿が出ないのは初めてだから様子を見よう」は危険です。
違和感を覚えたら、すぐに泌尿器科または救急外来へ。
命を守るための第一歩です。
